ドリームナイト・アット・ザ・ズー|動物園で過ごす、たった一夜の特別な時間

にっぽんの動物園

ドリームナイト・アット・ザ・ズー

6月第1金曜日の夕暮れを過ぎ。
静かになった動物園の園内を、家族連れがゆっくり歩いていきます。

車いすの子ども、病気の治療を続けている子ども、普段は人混みが苦手で外出そのものが難しい子どもと、その家族を、世界各地の動物園が招待します。

飼育員が笑顔で迎え、動物たちの話をしてくれる。ときにはエサやり体験やバックヤード見学もある。誰かに急かされることもなく、長い列に並ぶ必要もありません。

そんな特別な夜をつくる活動が「ドリームナイト・アット・ザ・ズー(Dreamnight at the Zoo)」です。

起源はオランダ・ロッテルダム動物園

ドリームナイトが誕生したのは1996年。

オランダのロッテルダム動物園で、近隣の病院に入院している子どもたちとその家族を招待したのが始まりでした。

当時招待されたのは約175人の子どもたちとその家族。主な対象は小児がんなどの重い病気を抱える子どもたちでした。

ところが、この取り組みは予想以上の反響を呼びます。

「これは毎年続けるべきではないか」

やがてオランダ国内、さらには世界の動物園へと広がっていったのです。

世界中の動物園へ

ドリームナイトの特徴は、本部が厳しいルールを押し付けていないことです。

参加する施設は共通の理念を共有します。

  • 病気や障害のある子どもたちと家族を招待すること。
  • 無料で参加できること。
  • 安心して楽しめる特別な時間を提供すること。

それ以外の内容は、それぞれの施設が工夫します。

そのため、飼育員との交流が中心になることもあれば、バックヤード見学や給餌体験が行われることもあります。水族館であれば、飼育スタッフとの特別プログラムが用意されることもあります。

活動は急速に広がり、今では世界各地の数百の施設が参加する国際的なネットワークになっています。

動物園同士が競争するのではなく、「子どもたちのために何ができるか」という理念を共有する。そんな温かい連帯感も、この活動の魅力でしょう。

主役は子どもだけではない

ドリームナイトを語るうえで見落としてはいけないことがあります。

このイベントの主役は、病気や障害のある子どもだけではありません。

家族全員です。

長期の入院や通院が続く家庭では、どうしても生活の中心が病気のある子どもになります。

もちろん、それは自然なことです。けれど、それには両親と兄弟姉妹の協力が不可欠です。

  • 家族旅行に行けない。
  • 遊園地に行く予定が変更になる。
  • 休日も病院中心の生活になる。

そんな日々を送る家庭は少なくありません。

だからドリームナイトには、両親だけでなく、兄弟姉妹も一緒に招待されます。

「病気のある子どもを支援するイベント」ではなく、「家族みんなが笑顔になれる夜をつくるイベント」。

このような考え方が活動の根底にあります。

なぜ閉園後に行うのか

なぜ通常営業中ではなく、閉園後なのでしょうか。

理由はとてもシンプルで、家族が安心して過ごせるからです。。

休日の人気動物園は多くの来園者でにぎわいます。

長い列に、混雑した通路。突然鳴り響く大きな音。

体調に不安がある子どもや感覚過敏のある子どもにとっては、大きな負担になります。

閉園後なら、人が少なく急がなくていい。

普段なら外出をためらう家族でも、安心して楽しめる空間になります。

動物園は誰のための場所なのか

ドリームナイトが広がった背景には、動物園そのものの変化があります。

昔の動物園は、珍しい動物を見せる場所でした。

その後、希少種保全や環境教育の役割が重視されるようになります。

野生動物を守るための繁殖。

自然環境について学ぶ機会の提供。

これらは当然のことながら、現代の動物園にとって欠かせない役割です。

しかし、もうひとつ大切な考え方があります。

それは「誰もが利用できる動物園を目指そう」という考え方です。

  • 車いす利用者への配慮。
  • 視覚や聴覚に障害のある人への支援。
  • 感覚過敏の人への配慮。
  • 高齢者や小さな子どもを連れた家族への対応。

動物園は、どんな人でも包み込む場所でなければならないのです。

人を支える場所としての動物園

日本で最初にドリームナイトへ参加したのは2005年のよこはま動物園ズーラシアでした。

その後、全国へ少しずつ広がっていき、現在では動物園だけでなく、水族館も参加しています。

2026年にも各地の施設でドリームナイトが開催されました。

一般来園者の目には触れにくいイベントで、派手な宣伝もほとんどありません。参加対象者も限られています。そのため、ドリームナイトの存在を知らない人も多いでしょう。

しかし、動物園の現代史を振り返るとき、ドリームナイトは大きなターニングポイントの1つだと筆者は考えています。展示の新しさや珍しい動物の導入とは別の形で、動物園の価値を広げてきた取り組みだからです。

動物園を訪れると、どうしても動物に目が向きます。

ライオンやゾウを見て圧倒される。かわいいレッサーパンダに癒やされる。珍しい動物との出会いを楽しむ。これらは動物園のベーシックでクラシックな楽しみ方です。

けれど、ドリームナイトのことを知ると、少し違った景色が見えてきます。「病気や障害があっても、誰もが楽しめる場所を目指す」役割も担っているのです。

日本のドリームナイト

本記事を執筆したのは2026年6月です。今年のドリームナイトは以下の動物園で実施されました(まだ実施していない園もあります)。

現在、公式サイトに掲載されている国内のドリームナイトのPartner(理念に共感しイベントを実施している園)は、以下の28園館です。今後さらに多くの動物園・水族館がドリームナイトの理念に共感し、Partnerになることを祈ります。

  • よこはま動物園ズーラシア
  • 金沢動物園
  • のいち動物園
  • 秋吉台サファリランド
  • 野毛山動物園
  • 熊本市動植物園
  • 池田動物園
  • 茶臼山動物園
  • 安佐動物公園
  • 千葉市動物公園
  • 井の頭自然文化園
  • 到津の森公園
  • 多摩動物公園
  • 上野動物園
  • 葛西臨海水族園
  • いしかわ動物園
  • 須坂市動物園
  • 宇都宮動物園
  • 富山市ファミリーパーク
  • 足立区生物園
  • 那須どうぶつ王国
  • 神戸どうぶつ王国
  • 八木山動物公園
  • とべ動物園
  • アドベンチャーワールド
  • ときわ動物園
  • 埼玉こども動物自然公園
  • ごかつら池どうぶつパーク

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