人間の生活圏である都市に順応し、したたかに生き抜いてきた生き物を紹介する『都会の生き物』シリーズ。今回は、最近では姿を見ることがめっきり少なくなった小鳥、「スズメ」を紹介します。
日本人にとって身近なスズメ
スズメは日本人にとって最も身近な野鳥の一つです。
公園や街角で見かけ、昔から童謡や俳句にも登場する存在です。
しかし、近年「スズメが減った」との声が多く聞かれます。本当にスズメは減少しているのでしょうか?
スズメは本当に減っているのか?
「スズメが減った」との印象は、気のせいではありません。
近年の調査・研究によると、1980年代以降、日本のスズメの個体数は減少傾向にあります。特に都市部では顕著で、農地の減少や建築構造の変化が影響していると考えられています。
一方で、地方ではまだ多く見られる地域もあり、減少の度合いは地域によって異なります。では、スズメが減っている原因は何なのでしょうか?
スズメの減少についての三上修さんによる研究
鳥類学者・三上修さんの研究によると、スズメの減少には「餌資源の減少」と「巣作り環境の変化」が大きく関わっています。
かつて、スズメは稲作農家の落ち穂や人々の食べ残しを主要な餌とし、屋根瓦の隙間などに巣を作っていました。しかし、都市化の進展とともに、稲作地が減少し、食べ物が減りつつあります。また、現代の住宅は気密性が高く、スズメが巣を作る隙間が減少しました。
三上さんの調査では、餌場が豊富な場所ではスズメの個体数が維持されていることが示されており、餌の供給が個体数に直結していることが明らかになりました。さらに、繁殖期に適した営巣場所が少なくなったことも、スズメの減少に拍車をかけていると考えられます。
ヨーロッパでの事情
では、日本以外の国ではどうなのでしょうか?
日本のスズメと同様に、ヨーロッパでもイエスズメの個体数が減少しています。特にイギリスでは、1970年代以降、都市部での激減が報告されており、これを受けて様々な研究が行われました。
イエスズメの減少は単一の原因によるものではなく、農業の近代化、都市環境の変化、大気汚染などの複合的な要因によるものであることが示唆されています。
特に、餌資源の減少と営巣環境の変化が最も大きな影響を与えており、これらの要因は日本のスズメの減少とも共通する部分があります。
また、この研究は都市化が野生動物に与える影響を考える上での重要な事例となっており、今後の生態系保全や都市計画においても参考にされるべき内容となっています。
この研究成果が「日本のスズメにも当てはまるのではないか」と考えた三上修さんが、日本国内の調査を進めたのです。
【参考文献】
Summers-Smith JD, “The decline of the House Sparrow: a review”, 96 British Birds 439 (2003).
まとめ
今回は、スズメの減少について、三上修さんの先行研究を参考にしながら、考えてみました。
今後も当ブログでは、人間の生活圏である都市に順応し、したたかに生き抜いてきた生き物をを紹介していきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
コメント