なぜ日本人は海藻を食べ、ジュゴンは海草を食べるのか?

ONE動物ガイド
今回のONE動物ガイドは、謎多き動物「ジュゴン」について。ジュゴンの主食は「海草」ですが、日本人にとってなじみ深いワカメやノリは「海藻」です。

なぜ人は海藻を食べ、ジュゴンは海草を食べるのか?

この疑問に迫っていきましょう。

基本情報(ジュゴン)

ジュゴン(英名:Dugong)は、カイギュウ目ジュゴン科に属する海生哺乳類です。インド洋から西太平洋の温暖な浅海域に分布し、とくにオーストラリア北部、フィリピン、沖縄周辺などで知られています。「人魚のモデル」とも言われてきました。

体長はおよそ2.5〜3m、体重は300kgを超えることもある大型動物です。流線形の体とイルカに似た尾びれを持ち、ゆったりと泳ぎながら海草を主食とする草食動物です。性格はおだやかで、動きも緩やか。愛らしい丸い顔つきと優しい目が特徴です。

現在では生息域の減少や漁具への混獲などによって個体数が減少しており、絶滅危惧種に指定されています。ジュゴンは海の生態系の健全さを示す「指標種」としても重要な存在です。

そもそも「海藻」と「海草」は、何が違う?

  • 海藻 … コンブ・ワカメ・ノリ・ヒジキなど。
     → 生物分類では「藻類」。根・茎・葉の区別がない。
  • 海草 … アマモ・スガモ・イトモなど。
     → 花を咲かせる「被子植物(種子植物)」の仲間。根・茎・葉の区別がある。

「海の中に生える植物のようなもの」というイメージは似ていますが、実はまったく別グループの生き物です。

「海藻」を食べるのは日本人の特徴?

海藻は「うま味成分」やミネラルが豊富

海藻にはグルタミン酸(昆布だしのうま味)やアルギン酸、フコイダン、ミネラル(ヨウ素・鉄・カルシウム)が多く含まれています。特に昆布のグルタミン酸は世界的にも珍しいレベルで高く、日本のだし文化の発展を支えてきました。

調理・保存しやすく、乾燥加工に適している

海藻は乾燥させても再び戻して食べることができるため、保存食として非常に優秀です。

ワカメ・ヒジキ・のりなど、干しても品質が保たれる点が、日本の食文化に適していました。

人間は「繊維質の分解」が苦手だが、海藻は比較的やわらかい

海藻の細胞壁はセルロースのほかに「アルギン酸」「カラギーナン」などの多糖類で構成されています。

これらは完全には消化できないものの、柔らかく煮たり加工すれば食べやすい。また、腸内細菌がこれらを部分的に分解してエネルギー源にすることもできます。

西洋人と異なり、日本人の腸内細菌は海藻を消化することができるという研究も発表されています。

ジュゴンが海草を食べるのはなぜ?

ジュゴンは完全な草食性哺乳類で、人間とは大きく異なる消化システムを持っています。ジュゴンは腸に「繊維分解菌」がいて、セルロースを分解して栄養を吸収できます。

一方、人間にとって、海草は以下の理由から食用に向きません。

理由① 硬く、繊維質が多すぎる

海草は陸上植物と同じ「セルロース」「リグニン」などの頑丈な細胞壁を持っています。人間はセルロースを分解する酵素を持たないため、海草を食べても栄養を吸収できません。

理由② 風味や食感が悪い

実際に海草(アマモなど)を食べてみると、味は草っぽく、青臭く、硬くて噛みにくいそうです。一部地域で家畜飼料などに利用される例はあるものの、人の食用には向かないとされます。

ジュゴンはどこで見られるの?

世界でジュゴンを飼育しているのは、世界でも三重県の鳥羽水族館とオーストラリアのシドニー水族館の2館のみ(※2025年10月時点)。

日本で見られるうちに、ぜひ鳥羽水族館を訪れてみてはいかがでしょうか?

まとめ

ジュゴンという生き物や、海草と海藻の違いについて、理解を深められましたか?

絶滅が心配されている動物だからこそ、どのような生き物なのかを少しでも知っていただきたくて今回のテーマに選びました。

特集してほしい動物などがいれば、ぜひコメントで教えてください!

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